ストレスが溜まり、不安な気持ちになると、私達はつい細かいことに意識が向いてしまいます。完璧を目指すあまり、いろいろ心配しすぎて、目の前の現実を楽しむ余裕がなくなってしまいがちです。一人で考えていると、よりいっそう、こういった傾向に陥りがちです 。

 

私は サンホゼのシニアセンター「友愛会」で 毎月無料で開催されている、患者と介護者のためのキャンサーサポートグループをお手伝いさせて頂いています。少人数で集まるこのグループは、全米でも数少ない、日本語でのサポートグループです。家族や知り合いを通して、または当事者として癌を体験している人、した人が安心して自分の気持ちを話せる場です。

 

患者や家族、友達が心配しないよう、本当のことは話さずに、「大丈夫」という姿勢を保ちたい気持ちも理解できます。でも、どこかでガス抜きをしましょう。心がまいってしまいます。サポートグループでは守秘義務もあり、心配なく自分の本当の気持ちを話すことができます。一人で思いつめるのではなく、似た体験を持つ人たちと、 気持ちを共有することで、孤独感が軽くなります。明日への活力も湧いてくるでしょう。つい、偏った考えに陥るという弊害を防いでくれます。サポートグループは、難しい状況をウツにならずに乗り切るための、重要なツールです。是非利用して下さい。

 


一人で籠って考えたい気持ちもわかりますし、それが必要なときもあるでしょう。でも、何時までも籠って、悩まないようにしてください。バランスが取れるように、サポートグループや、セラピーを活用して、皆さんが心身ともにバランスがとれて、健康でいられることを願っています。

子どもの視点ー9月2011年

どんなに賢い子どもでも、大人のように冷静に状況を理解することはなかなかできません。大人は、ついそのことを忘れてしまい、子どもがどのように理解しているのか、見逃してしまうことが多いようです。自分と他者との境がはっきりしない発達過程の子どもは、自分の周りでおこることが、自分のせいだ、と感じてしまう傾向があります。たとえば、自分の両親がケンカするのは「僕が悪い子だから」。離婚して、片親が家を出て行くことになると「私のことが嫌いだから」等、大人からしたら、予想もつかない結論を出して、傷ついていることがよくあります。

 

経験豊富な、尊敬されている心理学者が言ったそうです。クライアントがどうしてそのような言動をとるのかわからないときには「まず本人にききなさい」と。とてもシンプルですが、役に立つ言葉です。これは、もちろん子どもにも通用します。何か元気がないようだ、思い詰めているらしい、もしくは、いつもよりケンカがたえない、急にオネショや赤ちゃん返りをするようになったら、まずは子どもに聞きましょう。

 

その聞き方ですが、あれこれと決めつけてはいけません。もちろん怒って、声を荒げてもいけません。子どもが本当に言いたいことを抑圧してしまう可能性があります。 目線を会わせながら、「○○ちゃん/くん、どうしたのかな?」と、優しく聞いて、 自分で説明する空間/余裕をあげましょう。そして、子どもが言ったことに対して、「そんなことを思って、バカバカしい」等、否定しないで下さい。同意する必要はありませんが、理解はしてあげられるよう、努力して下さい。何かを誤解しているようなら、その子が解る言葉で、ちゃんと説明してあげて下さい。そして、話してくれたことに感謝しましょう。

 

理路整然と順序だってしゃべれない子どもの話を聴くのは、時間と心の余裕がなくてはできません。子どもが喋りたい時に時間も余裕もなくて、「あとでね」とやり過ごしてしまうときもあります。しかし、子どもの時間感覚は大人とは違います。「あとで」が永遠のように長く感じて、「どうせいつも自分の話は聞いてもらえない、自分は大切ではない」と思ってしまう子が多いようです。ですから、後で必ず、寝る前や、食事の後など、少し時間があり、自分も心に余裕のある時に、「さっきはちゃんと話が聞けなくてごめんね。今ならちゃんと聞けるから、話してくれる?」と聞いてみましょう。最初はすねて「別にいいよ」と言うかもしれませんが、その子の気持ちや、考えに興味がある、大切に思っているという姿勢を伝えれば、ちゃんと話してくれるものです。大人の子どもの意見を尊重する態度が、子どもの自信と考える力を育てます。誤解も早く解消して、トラウマにならずにすみます。是非、試してみて下さい。

 

 

 

物事の考え方(認知)や表現方法によって、私達の感じ方は大きく影響されます。例えば、コップに水が半分入っているのを見て、「ちぇっ!もう半分しか入ってない」と考えますか?それとも「ラッキー!まだ半分も入っている」と考えますか?全く同じものを表現しているのに、 心的構成(フレーミング )次第で、印象が変わります。前者は悲観的な感情(不満、焦り、悲しみ、怒り等)を引き起こし、後者は楽観的な感情(喜び、感謝、満足感等)を引き起こします。そしてその感情が、その後の判断や行動に大きく影響するのです。 商品の広告やマーケティング、ニュースの解説等はこういったフレーミング効果を利用して、私達の判断・行動を彼等が意図する方向に誘導しようとします。こうしたフレーミング効果や認知を、自分の意志でポジティブに活用する事もできます。認知療法はその最たる例で、ウツの治療や、前向きな人生を送る為に広く活用されています。(認知療法に興味のある方は、デビット・バーンズ著『いやな気分よ、さようなら』をご参照下さい。)

 

一度「悪い子/困った子」というフレームを作った子どもに対しては、中々良い面を見ることが難しくなります。何かあると「やっぱり!」とその子の悪い所ばかりが目についてしまいます。でも、「素直に言う事を聞かない子」は「ちゃんと自分の意志のある子」かもしれません。私が昔、スクールカウンセラーとして、小学校の先生や保護者と話す時に子どもの行動をポジティブにフレーミングし直すと、先生や保護者の方は、始めはキョトンとしましたが、新しい視点で子どものことを見るきっかけになり、彼等の対応が変化し始めました。全てのことをポジティブに変える必要はありませんが、その子の特徴を長所として認めると、本人の自信もつき問題行動が減少し、周りの人の対応も楽になっていきます。

 

自信のない人は、 無意識にネガティブなフレームを自分に当てはめ、出来ない事ばかりを探すことが多いようです。寝る前にベッドの中で大反省会をする代わりに、今日一日、自分が努力した事、完全ではなくても、できた事を3つ思い起こしてみて下さい。 「部屋を少し片付けた」「いつもより、子どもに優しく接した」等、 些細な事で構いません。そして「がんばった。えらいぞ。」と自分を褒めて、ポジティブなフレーミングに変えてみましょう。自分の気持ちに嘘をつく必要はありませんが、認知を少し修正する事で、気持ちは確実に楽になります。何かを改善した方が良い状況であれば、ポジティブなフレームに変える事で、実際の行動を起す後押しにもなるはずです。

 

自分のポジティブな面に気がつく訓練をしていると、周りの人のポジティブな行動にも気づきやすくなります。いつも文句ばかり言い、自分にも、他人にも厳しい人は孤独になりがちです。反対に、自分や周りのポジティブな面を認めて、小さな事にも喜びを見いだせる人の周りには、人が集まって来ます。なぜなら、心地よいからです。現実から目を背ける必要はありませんが、心地よく過ごす為に、少し考え方を調節してみませんか?

対人関係において、相手に悪気がなくても、自分には不快でやめて欲しい嫌な事はよくありますよね。 それは子ども同士にも頻繁におこることです。私がアメリカ、現地校でスクールカウンセラーをしていた時によく子ども達に教えていた対処法があります。とても簡単、かつ効果的なので、先生達もよく使っていましたが、意外に知らない方もいるようなので、またここで紹介してみようと思います。

 

「1・2・3ステップ」といって、他の人に嫌な事をされた時に、どのように対処するか、という簡単なテクニックです。最初に、

 

1:"(Please) Stop it!" /「やめて(下さい)!」と自分の意志を伝えるーこれでやめてもらえたら、しめたものなのですが、なかなかそうはいかない場合もあるでしょう。その時は

 

2:Walk away/その場を離れるー大概はこれで大きなケンカになることを防ぐ事ができますが、距離をとるのが状況的に難しい時もあります。

 

3:Tell someone you can trust to get help/ 信用できる人に相談して助けを求めるーyard dutiesや先生、保護者、セラピスト等に相談し、大人や第三者に介入してもらいます。

 

この順番も大切です。はじめから自分で解決しようとしないと、いつまでたっても子どもは自立心や自信がもてず、周りに依存し、弱い子だとみなされ、いじめや虐待のターゲットにもなりかねません。

 

これは、子ども同士だけではなく、子どもが大人から虐待されるのも防ぎます。不審者が近寄って来た時に、また知っている人でも、何か嫌なことをされそうになった時には「やめて」と伝え、その場から「逃げ」、他の人に「助け」を求める事で、犯罪を未然に防ぎ、あるいは早期発見につながります。また、大人もこのテクニックを利用できます。例えば、職場で同僚/上司との間でやめて欲しい事があるときは、1:相手に解りやすいように自分がその行為/言葉を嫌がっている事をはっきりと伝える。2:その相手とそういった状況/環境に居合わせないようにする。3:上司/HR等に相談する。ここでも、対処の順番が大切になってきます。相手に自分の意志を伝える前にいきなりHRに駆け込んでも、先ずは自分の意思表明をすることを薦められます、また大切なのは、1・2で上手くいかなかった時に、必ず3に進む事です。一人で悩まず、周りの人の協力を得て、より良い関係を築いていきましょう。

セラピストや看護士、警察官や消防隊員など、人を助ける職業の人が、陥り易い病があります。周りの人を助けるのは上手でも、自分の苦痛に気づいたり、助けを受けたりすることが苦手という病です。ストレスがたまりすぎて、 病気が悪化したり、虐待関係に陥り易かったり、苦痛から逃れようとアルコールやドラッグに溺れる人もいます。この人達は、幼少期に、子どもとして十分甘えられなかった「よい子」が多いのです。

 

The Drama of the Gifted Childby Alice Miller1979)は、子ども達が生延びる為のサバイバルスキルとして、自分の気持ちを押し殺し、他の人の面倒を見ることを優先するようになるのかを、解り易く描いている本です。彼女の言う《gifted child》というのは、恵まれた子どもではなく、薬物・アルコール中毒や、鬱などの病気で、子どもの世話をできない親の子どもを指しているのです。彼等は自分がしっかりしなければ、と思い親の世話をしはじめます。それは、生き延びる為に彼等が仕方なくしたのであって、選択したのではありません。親が頼まなくても、身の回りの世話をしたり、他の兄弟姉妹の面倒を見たり、セラピストのように、愚痴や悩みを聞いたりするのです。でも、その彼等の辛い気持ちは、誰が受け止めてくれるのでしょう?

 

兄弟姉妹の中でも、全ての子どもが、こういう役割を担うのではなく、年長の子どもだったり、末っ子が引き受けることもあります。その子は「よい子」として、周りにも親にも認められ、その行為に熟練してゆきます。そして、周りが何を必要としているのかには敏感になっても、自分が何をしたいか、して欲しいのかは解らない大人になってゆくのです。 周りの人たちは、別に頼んだわけでもないので、彼等は好きでやっているのだと思い、感謝もしないことすらあります。報われない彼等の怒りは、やがて「自分の人生は何だったのか」というやり場のない悲しみに変わってゆきます。

 

そうした彼等の、親でなくても、親類や近所の人、先生など、他の大人が、頑張っている「よい子」に、「頑張っていて偉いね。でも、あなたも辛いし、苦しいよね。解るよ。時には弱音を吐いても、我が儘を言ってもいいんだよ。いつでも聞くからね」と言って抱きしめれば、その子の心のダメージは、緩和されていきます。大人になってからでも、変ることは可能ですが、時間がかかります。苦しみは長引くのです。あなたの周りの「よい子」は、何故、自分の気持ちを押し殺しているのでしょうか? 話を聞いてあげて下さい。もし、あなたの子どもが、あなたの為に「よい子」にならざるを得ない状況にあるのならば、子どもの為にも、是非セラピーを受ける等、状況を変えるためのサポートを受け入れて下さい。

 

6月の終わりに、東北大震災の被災地、 梅雨入りしたばかりの岩手県に行って来ました。 個人ボランティアとして、陸前高田ではガレキ処理、大船渡での避難所・仮設住宅訪問、そして遠野ボランティアセンターで、見つかった写真の洗浄処理のお手伝いをしました。内陸地域の被害は、3ヶ月が経過した当時、目に見えるほどではありませんでしたが、津波の被害のあった海岸沿いの地域は、本当にまだ大変な状態でした。被災者の方々の反応も様々で、一括りにはできない、支援の難しさを感じました。

 

避難所訪問で印象に残っていたのは、それぞれの人の受け取り方の違いでした。震災直後には未曾有の災害を一緒に経験した人達ならではの一体感、共同体意識がありましたが、衣食住の問題が解決し始めた辺りから、被災者同士での格差、境遇の差が色濃く浮き上がります。仮説住宅に入りたくても、何度も抽選から漏れてしまい、落ち込む人。家族や知り合いを亡くして、孤独になってしまった老人。仮設住宅に入って、見舞金を受け取っても、お酒とギャンブルでストレスを晴らそうとして、家族崩壊してしまう人。生き残ったのは幸いだが、これから家族を抱えて、仕事も、お金も、家もなく、どうして良いのか途方に暮れる人。被災前からの問題が反映・増幅され、皆さん苦しんでいました。 私がお世話になった民宿のおかみさんは、義理のお兄さんを津波でなくした後、恐ろしくて、海岸沿いには全く足を踏み入れられないらしく、私に現地の様子を毎晩聞いてきました。彼女の「亡くなった人には気の毒だけど、生き残った人の方がこれから大変だ」という言葉が、心に残りました。

 

被災者の中でも、新聞の被災地関係の記事を食い入るように見る人と、それを見せられて目を背ける人。3〜4ヶ月経って、やっと当日の記憶が戻って来て、その恐ろしさに震える人。人によって、反応は様々で、どうするのが一番良い、とも言えません。子どももその通りで、きちんと言葉に出して言える子。赤ちゃん帰りして、必要以上に甘える子。心を閉ざしてしまい、引きこもりになってしまう子。火のついたように泣き叫ぶ子。色々です。こういったストレス反応は、ショッキングなことが起こった直後〜数ヶ月後までは、誰にでも見られる自然な反応です。その事件のことを繰り返し絵に描く子もいます。人間の心にも、自然治癒作用の様なものがあり、何とかして、この辛い状況を乗り越えようと自分なりに工夫します。自傷行為や、他人を故意に傷つけることでなければ「そんなことはするな!」と怒ったり、止めたりしないようにして欲しいものです。また、本人が喋りたがらないのに、無理に話させ、心の傷を大きくしないことも大切です。

 

状態が落ち着き、周りの大人が落ち着いてくれば、自然に少なくなっていくはずですが、中には改善がみられないケースもあります。そういった時には、早めに専門家に相談して下さい。災害支援のように、気長に、忘れることなく、それぞれの必要に沿って対応して行きましょう。

セラピストという立場上、 私は個人の生い立ちを細かく聞きます。国籍に関係なく、クライアントが親の躾に対して強い不満を持つものに、サイレント・トリートメント(無視)があります。これは、親が何かしらについて怒っている時に、ガミガミ文句を言うのではなく、子どもの存在・行動・言うことを無視する態度を指します。 これは、子どもだけではなく、やられる人にとっては、とても辛い仕打ちです。

 

やる側にとってみれば、怒りを見境なくぶつけるよりは、サイレント・トリートメントのほうが相手にもダメージが少ないだろう、と判断しているのかもしれません。たしかに、怒りに任せて怒鳴ったり、暴力を振るったりしてはいけません。でも、サイレント・トリートメントをされたほうは深く心を傷つけられるのです。どうやら相手は怒っているようだけれど、どうしてなのかわからない。話しかける隙もない。愛の反対は、無関心だと言う人もいるように、自分に反応・関心がないと感じると、子どもはとても傷つきます。相手の機嫌を直そうとして、おどけてみせたり、話しかけてみたり、自分を責めたりします。それでも相手が黙殺を続けると、どうして良いのかわからず、途方に暮れてしまいます。明らかに気分を害しているのに、何も話さないので、解決のしようもない。皆が不幸な気分になります。

 

怒りでコントロールを失うことを恐れているのなら、タイムアウトを取りましょう。 通常、何か悪いことをした子どもを躾ける為のタイムアウトは、その子どもの年齢+1分が理想的と言われます。そして、どうしてタイムアウトが必要なのか説明し、時間の経過がわかり易いように、時計/タイマーを目の前に置く。周りに何か気が紛れるものを置かないのが基本です。タイムアウトをとることで、子どもだけではなく、親も興奮した気持ちが落ち着き、冷静に物事が受け止められるようになります。ポイントは、ちゃんと説明をする、タイムアウトの時間を区切ることです。

 

子どもに対してだけではなく、 大人にもタイムアウトは有効です。何も言わずにその場を去ってしまってはタイムアウトにはなりません。必ず、「感情的になりすぎて、 今話し合っても後で後悔することを言ってしまいそう。30分タイムアウトが必要だから、散歩に行って来る。その後に話そう」と、どれくらいタイムアウトが必要なのか、いつだったら話し合えるのかを相手に伝えましょう。そして、その後ちゃんと話し合って下さい。

 

何も言わずに、相手に解ってもらおう、変ってもらおうと考えるのは、サイレント・トリートメントと同じことです。必要であればタイムアウトも取りながら、ちゃんと話し合えば、前に進んで行ける筈です。大切な人との繋がりをより良いものにしていきましょう。

東北関東大震災の被害者、またその関係者の方々に、心よりお見舞い申し上げます。

この震災の影響は、現地で災禍に遭われた方は言うに及ばず、日本中、そしてベイエリアに住む日本人にも広がっています。 離れていても、仔細な情報や、決定的な映像が見られるのは、現代のテクノロジーの恩恵です。しかし、あまりにもショッキングな映像に、恐ろしくなり、寝られなくなることもあります。大人の私達でもストレスをうけるのですから、ニュースが感受性豊かな子ども達に与える影響は、図り知れません。どのような反応症状が予測されるのでしょう。そして、今回の震災に限らず、災害が起った時には、どのように子どもをニュースの影響から守ったら良いのでしょうか?

 

<ストレスによる反応症状の例>

・睡眠障害・悪夢をみる

・普段よりケンカする/大人しい

・緊張している/赤ちゃんがえりする

・家族に対する心配/一人になりたがらない

 

これらの症状は、ストレスを体験した後に起こる自然な反応です。周りの大人が安心出来るように気をつけてあげれば、通常は時間とともに改善していきます。しかし、1ヶ月以上経っても改善が見られない場合は、他の障害を発症している可能性もありますので、医師・セラピスト等に早めにご相談下さい。また、以下のことにも気をつけてあげて下さい。

 

<ニュースを見ることの影響を小さくするためのガイドライン>
・子どもがどれだけの時間、ニュースなどを見ているか知っておくこと。
・報道が子どもを苦しめたり混乱させたりすることが予測されるなら、子どもと話をする

   ために十分な時間がとれ、静かな場所が取れることを確認しておくこと。
・子どもがニュースを見るときは一緒に見ること。
・子どもが何を聞いて何を疑問に思ったのか聞いてみること。
・必要な時にはそばにいて子どもに、安全を守ってあげると話し、子どもに簡単な言葉で

   安心を与えること。
・これまでになかった不眠や恐れ、夜尿、大泣き、自分の心配について話すなど、報道が

   子どもに恐怖や不安を与えた場合に起こる可能性のある症状を見つけること。

(武蔵野大学 小西聖子氏による「子どもとニュース」より抜粋)

 

上記のガイドラインや、他にも「子どもと災害報道」・「子どもたちの心のケア」等が日本トラウマティック・ストレス学会が作った、大震災支援情報サイトに載っています。http://jstss.blogspot.com/ よろしかったら、ご参照下さい。

 

家庭内暴力というと、殴ったり、けったりを思い浮かべ、「私とは関係ない」と思う方も多いでしょう。しかし、実際に自分が殴られていなくても、他の人が殴られているのを見たり、言葉の暴力をうけたりして育つと、その影響は、実際に殴られて育ったのと、大きく変わりません。最近の研究成果では、 身体と心の痛みは、 脳の同じ部位に、記憶として保存されることがわかっています。心が傷つく、というのは、身体が傷つくのと同じように痛むのです。そして、その痛みは心の育成に、大きく影響します。

 

私のクライアント、Jさん(仮名)は、謝る事、また、人と話し合って、問題を解決するのがとても苦手でした。普段は、愛想が良く、周りがぱっと明るくなるような人ですが、少しでも相手が自分に反感を持っている、と感じると、必要以上に相手を攻撃し、酷いことを言います。後から後悔しますが、その時は自分を止められません。私生活では、パートナーに言葉の暴力をふるい、職場では、同僚とのイザコザが重なり、仕事を失いました。セラピーを始めてみると、Jさんの生い立ちが、過剰な反応に深く関わっている事がわかりました。

 

Jさんの父はとても厳しい人で、口答えをされると、自分の妻や、子どもに容赦なく手を挙げていました。4人兄弟の末っ子だったJさんは、兄弟や母親が大声でけなされたり、殴られるのを見て、びくびくして育ちました。決して父親を怒らせないように注意していたJさんは、直接殴られ、怒鳴られる事はありませんでしたが、怒りを適切に表現し、話し合いで問題解決することを、家庭で経験した事も、見た事もありません。Jさんが学んだのは、少しでも早く、より口汚く罵れ、相手をねじ伏せる力が強いほうが主張を通せることでした。

 

人によっては、自分の親のようにはなるまい、と努力して自分の行動を変える人もいます。しかし、多くの子どもは、生まれ育った環境を「こういうものだ」と受け止める傾向があります。 Jさんも、自然に自分の父のように振る舞うようになってしまっていたのです。セラピーの過程で、その事に気付き、トラウマを治療する事で、だいぶ穏やかになり、パートナーとの関係も改善しました。

 

子どもに直接言っていない、という言い訳をして、言葉の暴力を実行してはいませんか?「本当になにをやっても駄目だ」「おまえさえいなければ」等、相手の存在を否定する言葉も暴力です。完璧な人間はいませんから、そう思ってしまう時もあるでしょう。でも、それを言わないでいられるように、心のメンテナンスをしましょう。ストレスが溜まっていたり、疲れていたりすると、つい言葉のコントロールが利かなくなりがちです。休息をとる、ストレス解消を積極的にする、気分転換をして、ポジティブ思考に切り替える、セラピーに行く等して、自分と、周りの人の為に、言葉の暴力がない環境を整えましょう。

フロイト(Freud,S)と共に心理学の巨匠として有名なユング(Jung, C. G)は、人が外界との関わりにおいて その環境に応じて無意識的に形成する一定の態度を、ギリシャ古典劇の仮面になぞらえて、ペルソナ(Persona)とよんだ。昔は多重人格症(Multiple Personality Disorder)、現在は解離性同一性障害(Dissociative Personality Disorder)と呼ばれる障害のように自我がそれと同一化し、使い分けている自覚がなくなってしまわない限り、社会生活にとって必要かつ有用な機能である。

 

これは多様な社会に合わせて生きてゆく為のサパイバルスキルの一つであり、大多数の子どもは、成長する過程で自分の接する状況の複雑さにあわせて、このペルソナを形成、使い分ける術を少しずつ習得していく。「こういう時には、こうした方が上手くいく」と、周りの大人がペルソナを使い分ける態度を観察したり、また直接教えられたりしながら、試行、失敗を繰り返しながらも、自分のペルソナを増やしてゆく。しかし、これを上手く活用しない、若しくはできない子どももいる。

 

仮面を取り替えるように、態度だけではなく、言うことを変え、嘘を言う大人を見て、ああいう風にはなりたくない、と反感を抱く子どももいる。 相手が驚き、うろたえる反応を期待し、時と場所を選ばずに、わざと言いにくいことを言う青少年もいる。こういう反抗的な態度、ペルソナを意識的に使わない態度は成長するにつれて減少していくことが多い。しかしそれとは違い、生まれつき、相手の感情や、周囲の状況から求められていることを読み解くのが苦手なアスペルガー障害(Asperger Syndrome: 以下、略してAS)の場合もある。

 

ペルソナを利用するには、それぞれの環境にあわせて、状況や相手が自分に何を求めているのかわからなくてはできない。ASの子ども、そしておとなは、殆どの場合がわざとペルソナを使わないのではなく、使い分けられないのだ。はっきりとは口にだして要求されなくても、他の人ならば暗黙の了解をえる寄りどころになるためのシグナルや、ボディーランゲージをキャッチするのが苦手なため、年齢に見合わず、バカ正直にも、KY(空気読めない)なことばかりを言ってしまうのも、この特質に由来することが多い。相手の反感をわざと引き起こそうとする前者の場合とはちがい、周りと溶け込みたいのに上手くいかず、そして人一倍、自分のネガティブな気持ちには敏感なASの人達は対人関係に自信をなくし、落ち込んでいく。あなたの周りにも、ASを診断されないまま大人になり、人との交流を渇望しているのに上手くいかずに寂しく過ごす人がいるかもしれない。大人になってからでも対処法や、改善する方法はあり、ましてや子どもの頃に早めに発見、治療されればASと併発しやすい孤立、ウツなどを防ぐことも可能だ。誰もが ペルソナに呑まれることなく、 心地よく活用する道はある。一人で悩んでいないで、周りの人や専門家に相談してみてはどうだろうか。